No.4
「別府の温泉総調査」
こんなことを言われることがある。研究生活とは、どんな風なのでしょうか。コンピューターの前に座って、送られてくるデータを解析したり、計算をしているというイメージが浮かんでくるのですが。とんでもない。確かにパソコンの前に座っている時間は少なくなが現実は違う。
たとえば、温泉の研究には、湧出量や温度や泉質などのデータが必要だが、それらが自然に集まってくるはずもないから、現場に出掛けて、源泉ごとに調査しなければならないのである。
そういうわけで、私たちは、ほぼ十年ごとに別府の温泉の現状を把握するための調査を行ってきた。しかし、三千本もの温泉井戸のすべてを調査することは到底できない。そこで、高温の熱水や蒸気が噴出している、およそ二百本の井戸は全部、普通の温泉は二百ヵ所ぐらいを選んで調べ、あとはアンケートなどにたよるのである。それでも、前後三年はかかる。
今年からその総調査を開始することにしたものの、十一月も末になってようやく始めることができた。日程が折り合わなかったのが、遅れたことの最大の理由であるが、どうもそれだけではないような気もするのである。総調査をすると、肉体的だけでなく、精神的にかなり疲れるという前回までの記憶が、踏ん切りをつかせなかったのかもしれない。
ともあれ、研究のためだけに限らず、別府の温泉の将来のためにも、基礎データは蓄積しておく必要がある。この紙面を借りて、各源泉の所有者や利用者の方々に、ご協力をお願い申し上げる次第である。
- 「大分合同新聞」夕刊 1996年12月9日 -
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