サイト内検索 powered by Google
|
活火山「鶴見岳・伽藍岳」の東麓、別府湾に面する斜面のあちこちに温泉が湧いていることは、古い昔から知られていました。それらは天然のものだったのですが、明治時代になると、「上総掘り」という方法で井戸を掘って温泉を取ることが始まりました。別府では「湯突き」と呼ばれました。最初の掘削が行われたのは、明治12(1879)年のことです。世界でも最初の温泉井戸だったと思われます。 太平洋戦争後には動力による掘削機が導入され、廃棄されたものも含めると、優に3000本を超える温泉井戸(源泉)が掘られました。これは、日本全国の源泉数のおよそ10%に当たります。これほど多数の源泉が、東西約5km、南北約8kmの狭い範囲に掘られているのですから、けだし壮観と言えるでしょう。 多数の井戸が掘られたおかげで、温泉の泉質・温度・水位、地下の温度などの大量なデータが得られました。また、別府一帯の地質や地下構造の調査も行われました。さらに近年、地球の成り立ちに関するプレートテクトニクス呼ばれる考え方が発展し、私たちの地球観は革命的とも言えるほどに変化しました。これらに応じて、温泉の研究もまた大きく変化・進展しました。 他方、人々は地獄(とくに高温の温泉や噴気地)の激しさを恐れながらも、入浴はもとより療養・料理・明礬製造など多面的に温泉を上手に利用してきました。かつては恐れられた地獄、そして「湯けむり」は、別府を象徴する重要な観光資源となっています。まさに、人々は、自然現象である温泉・地獄と関わり合って、「温泉文化」を作り上げてきました。 世界には数多くの温泉・地熱地域がありますが、別府ほど科学的な調査研究がなされているところはありません。また、別府ほど多様な温泉文化に触れることができる温泉地はありません。ところが、それらは、広く認識されているとは必ずしも言えないようです。その理由は、たとえば自然科学の論文に見られるように、専門用語で書かれていること、およびそれに由来する閉鎖性の故と思われます。 そこで、私たちは「別府温泉地球博物館」を作ることにしました。博物館と言っても、建物はありません。
この「別府温泉地球博物館」が、私たちが地球と親密に付き合って行くための場になることを願っています。 由佐悠紀(別府温泉博物館館長:京都大学名誉教授) 別府温泉の多岐にわたる科学の魅力を世界に向けて情報発信し、別府観光の新しい価値を創造し、 新しい時代の観光客の創出。 別府温泉に関するさまざまな情報をウェブ上で発信し、それによって訪れた観光客を温泉科学のフィールドに案内するシステムを作り、それらを支えるプロガイドなどの人材を市民の中に養成する。 別府温泉地球博物館は、特定非営利活動法人別府温泉地球博物館によって企画・運営されています。
|