No.14
「立派な山を!」
春先からあまり降らなかったところに、空梅雨が追い討ちをかけた。六月下旬には、西南日本は記録的な少雨となって、あちこちで水が不足したのは、ご存知の通りである。
別府では、昔からの自然湧出の温泉で湯量が減り気味になったことが報じられた。とは言え、基底の量は維持されているようだった。背後に鶴見の深い山々が控えているおかげである。しかし、降らないままで梅雨明けかもしれないというような予報もあって、どうなることかと心配もした。
それが七月に入ると、一転して豪雨である。十日には、県西部の山地部で大きな被害が出た。その主因は、大量の流木が川をせき止めて、氾濫させたことにある。大量の流木を発生させたのは、十数年前の台風による風倒木被害と近年の林業衰微がもたらした山地の荒廃であるらしい。
インドから地中海沿岸域にかけて発展した数々の古代文明の衰退を早めたのは、家畜の放牧による草地の荒廃化とともに、農地の開拓および燃料・建材・商船や軍艦の建造などのための木材資源の過度な開発、すなわち、樹木の伐採による森林破壊であったとされる。
十一日のテレビで、坂本和昭九重町長が「立派な山をつくらないといけない」と、強い意志を述べられた。山とは森林のことであろう。森林のきちんとした育成は、温暖化が必至とされる近未来の、環境・水資源の保全を図る上でも不可欠である。口幅ったいながら、その政策をしつこく推し進めていただきたい。
- 「大分合同新聞夕刊」 2005年7月 -
ページTOP