No.16
「温泉の観測」
人間の行動は、多かれ少なかれ環境に影響を及ぼす。この当たり前のことが、地球温暖化の例を持ち出すまでもなく、ごく最近まで、一部を除いて、ほとんど省みられなかった。
私たちの大分県で重要なことの一つは、別府や九重を中心とする温泉にかかわる問題である。温泉や地熱を開発するに当たっては、資源を保護しつつ進めなければならないのは当然のことであり、それを見極めるためには、その温泉地の特徴をできる限り把握しなければならないことも、当然である。そのためには、多方面にわたる調査や観測をしなければならない。温泉国日本では、つねに大きな関心が寄せられてきた。
しかし、世界的に注目されだしたのは、これもまた最近のことで、ようやく世界の実情をとりまとめる作業が始まった。私は、別府での例を報告することになり、私たちの研究施設が蓄積してきた資料を整理したのだが、あらためて深く感じ入ることに出合った。
それは、ある温泉の温度と水位を、1925年からその温泉が枯渇した1967年まで、40年以上にわたって、毎日1回はかり続けたという事実である。
残されているデータは、世界に類を見ない貴重なものである。いったい何人の方々が、この延々と続いた観測に携わられたのか、正確なところは知るよしもない。実は、私も、最後の2年間だけ、これに参加するという、またとない体験をさせてもらったのだが、何にもまして、先人たちの努力に頭が下がる思いである。
※昨年11月13日に別府市全域温泉一斉調査「せーので測ろう!」を
別府市・別府ONSENアカデミア・別府温泉地球博物館・京都大学地球熱学研究施設・総合地球環境学研究所の5つの組織の共催で約30年ぶりに温泉の変化を調査しました。
調査結果は、温泉一斉調査マップでご覧いただけます。
http://www.wefn.net/beppu/
- 「大分合同新聞夕刊」 1998年6月 -
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