No.20
「別府温泉の湯量」
ある家庭で、収入が支出より多い場合はその差額分だけ蓄えが増えるし、その逆の場合は蓄えが減る。これは当たり前であって、同様のことは会社・自治体・国家などすべての組織に共通する、いわば原理である。この原理は自然界の諸現象でも成り立っていて、保存則と称する。
こんなことを書くのは、昨年の暮れ近く、気になる統計が公表されたからである。それは、本紙11月9日の夕刊で「快適泉都の暮らし」として報道された別府市の2005年の統計データの中にある。記事には「世界に名だたる別府八湯の温泉ゆう出量は一日約13万7,000キロリットルで…」とある。
別府市のホームページには、この日量とともに一分当りの量が挙げてある。実は、もともとのデータは一分の量であって、これを機械的に1,440倍して日量としているのである。ところが、約二千五百本ある源泉の約80パーセントは動力揚湯泉であり、それらでは一日中温泉水を採取しているわけではない。
温泉の水そのものは、別府流域に降った雨水である。粗い見積りだが、地下水となるのは一日13万キロリットル程度、そのうち温泉水になる量は六万キロリットルほどである。だから、報道されたような日量を本当に採取し続けたら、別府温泉は重大な影響を蒙る。今のところ、採取量が五万キロリットル程度に抑えられているのは幸いである。
数字が大きいのは景気が良いけれども、資源保護の観点からは、こうした意識は改めるべきだと思う。日本一の大温泉だからこそ。
※「せーので測ろう! 別府市全域温泉一斉調査」は、
別府市・別府ONSENアカデミア・別府温泉地球博物館・京都大学地球熱学研究施設・総合地球環境学研究所の5つの組織の共催で温泉の変化を調査しています。
継続的に実施することで温泉資源の保護と適切な利活用のあり方を探る上で重要な情報を提供することが期待されています。
- 「大分合同新聞夕刊」 2007年2月 -
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