No.21
「温泉温故知新」
温泉の水は雨水で、地球内部から初めて地表に現れた水はほとんど含まれていない、というのは今や常識である。しかし、半世紀以上も前、温泉の科学的研究が始まって間もないころには、ゆう出量の半分程度はありそうだという見方があった。
これは別府温泉でのゆう出量変動の観測がもとになっていたのだが、果たしてそうか、大きすぎるのではないかという疑問がつきまとい、後に訂正されたのである。
そして、水分子そのものの由来を調べる研究手法が開発されて、現在の解釈が定着したのであった。
では、以前の研究は無意味であったのかというと、決してそうではない。科学の進展は、普遍化すれば人間の知性の進化は、こうした誤謬と修正の際限の無い繰り返しの結果であって、温泉水の起源に関する議論も、その道程を物語る貴重な記録であり、そうしたものを踏まえて今日がある。
さて、雨水起源であることが明確になると、たとえば一日当たりの温泉利用可能量、すなわち資源量が雨量に左右されており、限界があるという考えに行き着くのは当然である。
三月末に公表され、本紙でも紹介された大分県温泉管理基本計画に、将来のありかたとして挙げられた、温泉地ごとに温泉利用量の限度を定めようとする「総量規制」の背景には、こうした歴史がある。
※大分県の温泉基本計画
大分県は平成13(2001)年3月に全国初の温泉行政の指針となる計画として、に「大分県温泉管理基本計画」を策定されましたが、その後の温泉資源やその利用を巡って、新たに生じている課題や社会経済情勢の変化等に適切に対応するため、2016年12月に今後9年間の温泉行政の指針となる「おおいた温泉基本計画」を策定しています。
http://www.pref.oita.jp/soshiki/13070/oitahotspringbasicplan.html
- 「大分合同新聞夕刊」 2001年4月 -
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