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地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.25
雲南紀行 3 石の道

 国境の町 瑞麗(ルイリー)から少し北上したのち、大盈江(ダーインジャン)に沿って北東方向にさかのぼった。大盈江は、ミャンマーを北から南に貫く大河イラワジ川に注ぐ支流のひとつであり、その上流に目指す騰冲(トンチョン)がある。

 川に沿うとは言っても、それは全体としての道の方向のことであって、実際には、さらに小さな支流が刻んで作りだした、いくつもの山と谷を横切って行くのである。11月も下旬に近いのに、おだやかな陽光で、寒さはまったく感じない。

 斜面を切り開いた棚田では、米の取り入れの最中であった。高みから見おろすと、ある所では、むしろに並べた稲穂を棒で叩いて脱穀しており、また別の所では、脱穀したわらくず混じり籾を、竹か木で作ったスコップのようなものですくって空中高く放りあげ、そよ風にまかせて籾を選別している。もう、日本では、決して見ることのできない風景である。

 これまでの道とは違って舗装されているので、ほこりっぽくはないのだが、振動がいやに激しい。それも道理で、長さ15センチ、幅5、6センチほどの不揃いの石を敷き詰めているのである。石は、はじめ石灰岩であったのが、騰冲に近づくと玄武岩に変わった。いずれも、それぞれの地域に産する岩石である。石を切り出し、適当な大きさに割って、ひとつひとつ並べていったに違いない。現実に、そんな工事現場を見た。私たちが走った1000キロを超える道のほとんどが、そうした途方もない石の道であった。

  - 「大分合同新聞夕刊」  1994年4月-


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