No.29
「トルコ・パムッカレの石灰棚」
定年後の1年をなんとか息災に送ることができたので、その記念行事のつもりでトルコ旅行をした。旅程には、ギリシャ・ローマ時代の遺跡や奇地形のカッパドキアなどが含まれている。中でもパムッカレの温泉を楽しみにした。現役時の専門は忘れられないものとみえる。
3月15日の朝8時、エーゲ海に面するイズミルをバスで出発。およそ2000年前、オクタヴィアヌス(ローマ初代皇帝アウグストゥス)との決戦をひかえたアントニウスとクレオパトラが滞在したエフェソスの古跡を見物し、東に走って夕方5時頃パムッカレに着いた。
なだらかな丘陵の中腹が広い範囲にわたって、折からの夕陽を受けて白く輝いている。白いのは、温泉水から沈殿した石灰華である。パムッカレの石灰棚として高名で、世界遺産に指定されている。
裸足になって、30度くらいの湯が流れる石灰棚に入った。ぬるめの足湯といったところで快適である。が、写真で紹介されているのと比べると湯量が少ないし、石灰華もところどころ汚れている感じだ。
観光地として発展したため、ホテルなどへの配湯量が増大し、肝心の石灰棚を維持する湯量が減少したのが原因である。これを解決するため、ホテル用の湯量を制限する方策が取られ、廃業したホテルも少なくないとのことである。
昨今わが国では、温泉利用のあり方が社会問題化している。その根底には温泉資源の有限性に関する認識不足があると思われ、「パムッカレの石灰棚」問題と共通する。
※温泉の石灰成分が沈積した石灰棚「パムッカレ(トルコ語で「綿の宮殿」)」は、まるで雪に覆われたような純白の絶景。世界遺産でもあるこの地、眺めるだけでなく、入ることもできる温泉なのです!
-トリップアドバイザーから―https://tg.tripadvisor.jp/news/advice/pamukkale-hierapolis/
- 「大分合同新聞夕刊」 2005年4月 -
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