No.38
「30年ぶりの瓜生島」
2月末に突然、東京のテレビ局から「朝の番組で瓜生島伝説を取り上げたい。ついては、取材させて欲しい」という電話があった。今の世では忘れられがちな各地の伝説を語るシリーズを立ち上げたので、その一環として…との説明であった。
3月に入ったらすぐ取材チームがやって来てあちこちを撮影し、最後に、私にとっては久し振りの場所、大分市の、五号埋立地で取材を受けた。
1970年代半ばに結成された瓜生島調査会が現地調査で得た結論は、こうである。
慶長元(1596)年閏7月12日、別府湾で発生した地震によって、海外にまで知られた港町「沖の浜」が消滅したのは事実であり、それが後に変質して、伝説となったのであろう。その沖の浜は、五号埋立地辺りから沖合にかけてあった。
番組は、この結論にしたがって締めくくられた。
ここに至るまでの調査については、本紙で詳細に報道され、全国的な反響を呼んだのだが、当時画期的だった、音波探査機による海底下の地層調査を行ってから、30年が経つ。
番組には調査当時の写真も現われ、若かったときの高調した気分を少しばかり思い出した。そして、調査を支えた少なからぬ方々が、この間に他界されたことを思ったとき、30年という歳月の長さと重さが押し寄せてきた。
- 「大分合同新聞」 2009年4月-
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