No.61
温泉の都・ソフィア(ブルガリア)
数千年も昔、黒海の西岸に住んでいたトラキア人が温泉を発見し、その周りに町を築いたのがブルガリアの首都・ソフィアの始まりとされる。その名残は現在に及び、さらに発展して、市内のあちこちで温泉に出会う。代表的な温泉場は、市の中心部にある立派な建物の「中央公共温泉」であるが、旅行者は、それよりむしろ、建物の前の広場の一角にある「温泉汲み場」の方に目を引かれるかもしれない。
ブロック造りの細長い汲み場があり、横一列に並ぶ二十ほどのバルブのない蛇口から絶え間なく水が流れ出している。たくさんの市民が集まって来ては、その場で飲む人や手や顔を洗う人もいるものの、多くは持参したポリビンに汲んで帰っていく。私も試しにと手を出してみて驚いた。温泉だったのである。50℃に近い感じであった。
汲んで持ち帰ってどうするかというと、冷まして飲むのだそうである。腎臓・胃・肝臓・筋肉系・神経系の諸疾患から婦人病まで効能があり、「癒しの温泉」であるというのがうたい文句であるらしい。この状況をみると、ソフィアでの主な温泉利用は、飲泉であるように思われる。
使用料が気になる向きもあるかもしれない。町中のあちこちにある汲み場はソフィア市の管理下にあり、誰にでも解放され、すべて無料である。
ソフィアは人口130万人の大都市である。その中心部に豊富な量の温泉が湧き出し、市民が有効に活用している。世界には197の首都があるが、このような温泉の都はソフィアだけではなかろうか。
ソフィア市の温泉汲み場:1999年7月撮影
現在は改装されて様変わりし、カラフルな施設になっている。
「ソフィアの温泉」などで検索してみてください。
ソフィア市郊外の間欠泉:2010年8月撮影
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-公益社団法人大分県薬剤師会発行『おんせん県おおいたの飲泉スポット30 調査本2017』(2017)に掲載-
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