2023.5.26
No.85「扇山の風穴」
2月6日の土曜日、別府の扇山に登った。正式の名前は大平山であるが、さながら山頂をかなめにして扇を開いたかのような山容のゆえに、この通称の方がなじみ深い。もちろん、火山である。その背後に立ち並ぶ、峨々たるという形容がふさわしい鶴見連山とは対照的に、優美でなだらかな斜面を見せてはいるものの、登るとなるとかなりしんどい。
頂上付近に風穴があって冬でも暖かい、という噂をずいぶん以前に聞いたことがある。確認できないまま忘れてしまっていたら、去年の春、ふもとの鶴見に住んでいる佐藤さんという方が、その場所を教えてくださった。
それで、5月の連休に登ってみた。たしかに、小さな穴がいくつもある。温度計を差し込んでみると、15~17度の範囲にあった。標高およそ800メートルでの地温としては高いようでもあるが、気温もすでに20度を超えていたので、その影響かもしれなかった。
2月6日の登山は、寒い時期の様子を見るためだったのである。一面枯れ草の中で、穴の周りにはわずかに緑が残っていた。この調査には不都合なことに、この日は春一番が吹いて気温が上昇したけれども、いずれの穴の温度も気温より高い15度前後の値を示した。やはり、噂のとおり、いくらか異常なようである。
理由の詮索は、もう少し調べてからの楽しみに残しておくことにして、強風に吹きさらされながらのワンカップは、格別であったことを報告する。
ー1993.4 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
地球のはなし
ページTOP