2023.6.26
No.86「1本120キロメートル」
国際温泉学会から、今年はルーマニアで大会を開催するので出席されたい、という案内が届いた。
9月23日に、パリ経由でブカレストに着き、そのまま、大会が開かれるというシナイアという町に鉄道で向かった。シナイアはブカレストの北方約120キロにある。カルパチア山脈の南縁に位置する景勝地で、かつては王侯貴族の避暑地であったという。
お世辞にもきれいとは言えない、ごったがえす駅でウィーン行きの国際列車を待った。その列車がシナイアに停車するのである。屋根の無いプラットホームは、西日が差して大変な暑さである。今夏はヨーロッパも猛暑だったのだそうだ。のどが渇いたので、ビールを買った。一本1,500レイ、約85円である。スティックのアイスクリームは、これよりやや高く、100円前後である。初めての買い物なので、まあこんなものかと思った。
これもまたきれいとは言えない二等車に座って、案内してくれた人に運賃を聞いたら、1,760レイだと言う。100円である。ビールやアイスクリーム1本とほぼ同じなのだ。それで初めて驚いた。運賃が安すぎるのか、ビールが高すぎるのか。
ルーマニアは今、国の立て直しに向けて躍動していることを実感したが、物価などほうぼうのゆがみには大きいものがある…待てよ、公共料金の高い日本の方がかえってゆがんでいるのか?
ー1994.1 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
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