2023.9.26
No.89「軽業」
映画「ゴッドファーザー」で、コルレオーネ一家がニューヨークからラスベガスに進出しようとして、カジノにはショーが必要だとかなんとか、策を練る場面がある。アメリカ・ネバダ州・リノのカジノにもショーが掛かっていた。なるほど、映画のとおりである。
小心者のせいか、バクチには手を出す気はないのだが、ショーぐらいは見ておかないとせっかく来たかいがない。レビューと軽業のショーを、たいして期待もせず、時間つぶしのつもりでのぞいてみた。
軽業は、男女の中国人がした。10人ほどのグループの全員が、びっくりするほど若い。ほとんどが10代、それも中学生ぐらいに見える。
見せてくれた芸は、自転車の曲乗りから始まって、天井からつられたロープによじ登ったり、6、7段も積み上げたいすの天辺で逆立ちしたり、というような、テレビでおなじみのものばかりである。そんな技に、大感激してしまったのだ。
50代も半ばになると、世の中にはとうてい自分の手には負えないことがあると、自身の限界をいやでも思い知らされる。その手に負えないことを、それが学術的なことであれ軽業であれ、なし遂げている人に出会うと、その人が若ければ若いほど、わけもなく感激してしまうのである。そして、その度合いが、年毎に大きくなっていくような気がして、また1年が経ってしまったと思うのだ。
ー1995.12 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
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