2023.11.26
No.91「瞠目す」
2月下旬に、京都大学大学院理学研究科地球物理学専攻(正式には少し違うのであるが、いずれにしろ長ったらしい)の修士論文の発表会があった。大学卒業後の2年間の研さんの結果を公にするのである。
発表者は40人、私たちのころのおよそ4倍にもなる。若者の理科離れ現象が懸念されているとはいうものの、このところ大学院への進学者は増えているのである。
1人に与えられる時間は、発表に12分、質疑に3分、合計15分である。休憩時間を入れると、まる2日かかる。そのためもあって、この時間制限はきびしく守られる。発表の途中であっても、時間が来るとやめさせられるのである。だから、最小限の言葉で要領よく話すために、学生たちは十分に練習を積んで臨む。
今年の発表会では、2年半前の進学試験で記憶に残っていた学生が何人かいた。その記憶は、どちらかといえば、あまり芳しいものではなかった。端的に言えば、自信無げで幼い感じがして、大学院生としてやっていけるのだろうかと、いくらか危惧する気分があったのである。
そうであったのに、多くの学生が、あの自信無げだった学生たちも、堂々と研究成果を発表する。しかも、教官たちの意地が悪いとも思われる質問にも、自分自身の見解を悪びれることなく述べるのである。
「瞠目する」とはこのことか、と快い思いをした。
ー1996.3 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
地球のはなし
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