2024.2.26
No.93「早起き鳥」
もともと睡眠時間が短いのが、年とともにますます短くなり、おまけにこま切れ状態になってきて困ったことだ。なぜ困るかというと、それに相応して、昼間の頭の動きが鈍くなるような気がするからである。
3時間ほどで目が覚める。仕方がないから、手元の本を眺めてはうとうとし、また活字を眺め、というようなことを繰り返していると、新聞が配達されてくるので、それを読んでいると、早起きの鳥が鳴き始める。
かつては、雄鶏に決まっていたものなのに、聞こえるのはカラスの声である。無風流なと感じていたのが、慣れというのは恐ろしいもので、それなりに朝の風物詩のように思い始めた。
つい先ごろ、そんなカラスの声に、ツーツーという細い澄んだ声が混じっているのに気がついた。確信はないけれども、メジロに違いないと思う。
小学校に入りたてのころ、メジロ取りに行ったことがある。おとりのメジロを入れた鳥かごをヤマツバキの枝につるし、鳥もちをのばし付けた小枝を傍らに仕掛けて、息をひそめて何時間も待った。鳥もちは、モチノキの皮をはいで作った手製のものだった。
そのうちに、鳴き交わす声がせわしくなり、鳥もちの枝に特有の黄緑色の小鳥がとまった。かと思うと、くるりと体を回してぶら下がり、そのはずみで落下した。まんまと逃げられたわけだが、あのくやしさはいまだに忘れられない。
ー1996.8 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
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