2024.4.26
No.96「平成新山に登る」
平成2年11月に、雲仙岳が198年ぶりに活動を再開してから、すでに6年がたった。この間、粘り気の強い溶岩は盛り上がってドームを作り、一方では崩落して火砕流となり、大きな災害を引き起こしたのは、痛ましい記憶である。その活動もようやく沈静化し、新しいドームは平成新山と名付けられた。
火山研究には、いろんな手法がある。代表的な手法は、地震や地殻変動あるいは電磁気的変動の観測である。
もうひとつの重要な手法は、噴出物の成分の分析である。中でも、火山ガスの成分は、マグマの生成過程や活動の状況を示す指標として、重視されるようになった。これは、現在の火山活動もさることながら、より長期、より深部にわたる活動とのかかわりで重視されているのである。
とは言え、活動の最中に噴出口に近寄るのは至難のことだから、次善の策として、やや沈静化した後に採取することになる。この9月の初めに、それを試みようと、仁田峠から普賢岳への急な坂道を経て、新ドームに取り付いた。
赤茶けて角張った巨岩の群れから1本の草もない急斜面が立ち上がり、そのはるか向こうの頂上に、目指す青っぽい噴気ガスが遠望される。まだ不安定そうに見える斜面を登って、弱い噴気をいくつか採取したが、頂上まで行くふんぎりはつかなかった。なにか適切な方法はないかと、思案中である。
ー1996.11 大分合同新聞 別府版ー
★温泉マイスターnoteにも掲載しています
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