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第12回千原温泉湯谷湯治場(島根県)

執筆者広島市在住 高橋秀明・高橋潤子

 脱衣所から半地下への階段を降りていくと、ポワッポワッと優しい音が響く。目の前には、足元湧出の褐色湯が年季を重ねた木の湯船に満たされ、泡を立てて私たちを待ってくれている―。  島根県の山あい、千原川沿いの狭い一本道に沿って立つ木造2階建ての「千原温泉湯谷(ゆんだに)湯治場」。開湯は明治期で、全国的にも希少な自噴のぬる湯に直につかることができるため、コアなファンが多い秘湯だ。約34度の温泉が湧く岩場の真上に湯船を作っているため、鮮度も抜群。床や縁に付着した茶色の析出物も味わいがあり、じっと入っているだけなのに、1時間はあっという間に経ってしまう、そんな魅力もある。

 冬は降雪が深い地域でもあり、10月から翌年5月までは源泉を薪で沸かした五右衛門風呂の上がり湯が用意されているのもユニークだ。一つしかないので、男女で声を掛け合いながら使うのも面白く、昔ながらの湯治の雰囲気を味わうことができる。また、夏場は炭酸ガス中毒を防ぐため、扇風機が設置されている。

 当初は、やけど・切り傷・皮膚病などの療養専門の湯治宿だったといわれている。「観光目的だけや健康な方の入湯はお断り。この温泉は『薬湯(くすりゆ)』だから」と先々代や先代の女将さん。一見さんはお断りだったそうだ。

 最近、親類の方が運営を引き継ぎ、休憩も再開。脱衣所や湯小屋も手入れされ、風情はそのままに使いやすくなった。フェイスブックでの情報発信や、そば打ちなど地域イベントとの連携にも力を入れている。

 浴用とは別に、有料で持ち帰れる源泉もある。泉質に大きな違いはなく、自宅の風呂に入れたり、スプレー容器に入れて化粧水のように使ったりできる。

 中国地方では、新鮮な湯をダイレクトに楽しめる仕組みを残す温泉は貴重であり、「現代版地域密着の湯治場」として今後も期待されている。


【住所】島根県邑智郡美郷町千原1070
【電話】0855-76-0334
【時間】3月〜10月:8時〜18時 /11月〜2月:8時〜17時
   最終受け付けは終了時間の1時間前まで
【休み】毎週木曜
【料金】大人 500円、子ども300円
    部屋休憩(5時間内)1200円/人
    持ち帰り用温泉=100円/リットル
【泉質】
・湯治場浴場:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉(高張性、旧:含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉)
・持ち帰り用:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(高張性、旧:含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉)
【泉温】34℃(湯治場浴場)



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