第28回塚原温泉「火口の泉」
温泉マイスター 若松 君子
今回は、別府市街から車で30分ほどの、由布市塚原温泉の紹介をします。
塚原温泉
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塚原温泉は、800年ほど前に開湯したと伝えられる、大変古い温泉です。かつて、大正から昭和時代にかけて3件の旅館が営業していた地に、現在は、温泉施設「火口の泉」があります。
塚原温泉は、強酸性の温泉で、秋田の玉川温泉、山形の蔵王温泉とともに、日本3大薬湯として知られています。玉川温泉のpHは約1.2、蔵王温泉のpHは1.25~1.6、塚原温泉のpHは約1.5です。ちなみに、レモンのpHは2.1、梅干しのpHは1.9なので、どれほど酸性が強いかがわかります。そのため、石鹸やシャンプーは使用できません。
塚原温泉の温度は60℃前後で、泉質は、含硫黄・鉄・アルミニウム-カルシウム-硫酸塩泉です。非常に多くの成分を含んでいます。以下、「火口の泉」の公式ホームページから、塚原温泉の特徴である濃い成分についての文章を引用します。
二番目の特徴は、お湯に多量の金属イオンを含むことです。鉄含有量(456mg)は日本一で、温泉法基準の40倍以上を含みます。アルミニウム含有量は日本第二位(295mg)で、療養泉の基準の約3倍です。鉄分といえば「赤茶色」のお湯をイメージしますが、それは酸化された鉄(サビ)の色。新鮮な状態(イオン)の鉄は緑色のことが多く、「塚原温泉火口乃泉」も透明緑色のお湯です。このほかにも人体に有用なカルシウムや、硫黄も多く含み、様々な効能を期待できるお湯なのです。
また、酸性の強さは玉川温泉や蔵王温泉とほぼ同じですが、成分量では「塚原温泉火口乃泉」が群を抜いており、人間の生理食塩水と同等の「等張性温泉」でもあります。これだけ強い酸性の等張性温泉は類が無く、非常に貴重なものとされています。(塚原温泉「火口の泉」公式ホームページより)
塚原温泉の源泉は、活火山伽藍岳の中腹(標高約800m)に位置していますが、この伽藍岳の地下およそ10㎞に存在する約300℃の熱水溜りは、別府の温泉水全部の供給源だと聞くと、この温泉の成分の濃さも納得です。
「火口の泉」には、共同の内湯と露天風呂のほか、4室の家族風呂と離れの家族風呂とがあります。内湯の大人料金は500円、露天風呂は600円、家族風呂は1時間2,000円、離れの家族風呂は1時間2,500円です。
塚原温泉には、温泉のほかにもいくつかの楽しみがあります。その一つは、火口見学です。内湯の裏から歩いて登れます。普通のペースで5分くらいです。料金の200円は、温泉の受付で払います。道は舗装されていますから、歩きやすいのですが、少し坂は急です。でも、加熱蒸気の噴気や、地熱・温泉活動によって白く変質した岩肌を間近に見ることができるので、がんばって登ってください。
火口見学入口
青空に映える噴気
火口からの景色
火口からの景色
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もう一つの楽しみは、火口付近から見える、塚原高原や由布岳の景色です。標高が高いからでしょうか、天気が良い日は、空の青さが格別です。私が5月中旬に行ったときは、ミヤマキリシマが咲いていました。厳しい自然環境の中で、岩肌に張り付くように生えている様子は、感動的です。また、噴気からわずか数メートルのところにも咲いていました。
岩肌のミヤマキリシマ
噴気近くのミヤマキリシマ
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三つ目の楽しみは、塚原温泉の蒸気で20時間かけて蒸した、「むし卵」です。6個500円で販売しています。燻製のようで、とてもおいしいです。別府では、多くの施設が地獄蒸し卵を販売していますから、食べ比べてみるのも良いかも。
塚原温泉のむし卵
中身
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参考資料
塚原温泉「火口の泉」公式ホームページ
別府温泉地球博物館 別府温泉事典「伽藍岳」の項
ブラタモリ (角川書店) 監修:NHK「ブラタモリ」制作班
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