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第36回筑後川流域の温泉 ~高アルカリ性温泉の宝庫~シニア・マイスター 甲斐心也
今回はシニア・マイスターの甲斐が、九州一の大河 筑後川流域の温泉を紹介します。 最初に紹介するのは朝倉市の原鶴温泉の「延命館」です。浴室は筑後川に面しており、小さめの露天風呂からは川面が眺められます。開放感のある浴室というのはなかなか難しいもので、外からも丸見えになるので、首から下までは目隠しが必要になり、湯中から眺めは望めません。弱アルカリ性硫黄単純泉の湯は40℃ほどのぬるめで、明瞭なツルツル感があります。鉄分も含まれているようで、浴槽は赤く染まっていました。二酸化炭素の泡付きがあり、小さめの露天風呂ではさらにそれが激しくなります。分析書では遊離二酸化炭素は3mg、鉄分はなしとなっていましたが、いささか納得がいきませんでした。
延命館 朝倉市杷木志波15-2 map 次は朝倉市甘木のあさくら温泉「グランスパアベニュー甘木」です。ビジネスホテルの浴場ですが、ビジホの湯と侮ることなかれ、とびっきりの名湯です。男湯は内湯でサウナ付き、女性用は露天風呂と、よく考えられた構成です。ほのかに硫黄香のあるアルカリ性硫黄単純泉の湯は、源泉温度が30.4℃を加熱したもので、驚愕するほどのツルツルを超えてヌルヌル感があります。その秘密はPH10.0という高アルカリ性に、硫黄と重曹が追い打ちをかけます。3つの浴槽があり、一つはサウナ用の水風呂ですが、加温なしの源泉浴槽にすれば、もっと良くなるのになぁと思いました。
グランスパアベニュー甘木 朝倉市甘木1677―2 map 3湯目は久留米市田主丸の田主丸温泉「笹の湯」です。植木とブドウで有名な田主丸町の田園地帯の中に障害者支援施設「田主丸一麦寮」があり、同じ敷地内に笹の湯があります。玄関をくぐると、広いロビーにレストランやパン工房が併設されていました。浴室には内湯と露店風呂があり、土類:系重曹泉が掛け流されていました。その湯の色にビックリ、かすかな笹濁りの湯が美しい青色を呈しています。黒川温泉の旅館山河や黒川荘で見たのと同じで、鉄分が含まれているのもそっくりです。内湯の湯口は女河童像で、その足元から湯が注がれていました。分析書の硫化水素臭は感じられませんでしたが、この辺りで初めて出会ったナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の泉質に興奮を抑えきれませんでした。 笹の湯 福岡県久留米市田主丸町竹野631番地1 map 4湯目は久留米市城島町の久留米温泉「あおき温泉」です。田んぼの真ん中にポツンと立っている感がありますが、人気の施設でいつも客足が絶えません。内湯と露天、それにサウナを備えていますが、内湯の一番奥の小さな浴槽が最も含硫黄-ナトリウム-塩化物泉の源泉の特徴が感じられます。しかも65℃の源泉を熱交換器により冷ましており、そのおかげでこの極上湯に浸かれるという訳です。脱衣所でさえ感じられる甘い硫黄香があり、かなりのツルツル感と塩味もあり、分析書からは想像しがたい珍しい泉質です。ここの硫黄成分はチオ硫酸イオンで、観賞魚のカルキ抜きに使われる「ハイポ」にあたり、これも珍しいもののようです。この湯に塩素消毒された水道水を足すとどうなるの、などと考えていたら頭がこんがらがってしまいました。 あおき温泉 久留米市城島町上青木366-1 map 最後は家具の町大川市の大川温泉「大川昇開橋温泉」です。国の重要文化財で、全長507mにもおよぶ東洋一の可動式鉄橋の昇開橋の袂にあるスーパー銭湯がこちらです。湯はなかなかのもの、泉温70.9℃、湧出量毎分260L、弱いツルツル感のある成分総量5g超のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉です。少しぬるめの大浴槽、熱めの小浴槽、露天風呂、サウナ、ジャグジー、炭酸風呂など種類も豊富です。残念ながらコロナ禍で客足が減り、昨年4月に閉館してしまいました。 昇開橋温泉 大川市大字向島五ノ割2526-1 map |