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温泉マイスターがおすすめする温泉をご紹介いたします!

第36回筑後川流域の温泉 ~高アルカリ性温泉の宝庫~

執筆者シニア・マイスター 甲斐心也

 今回はシニア・マイスターの甲斐が、九州一の大河 筑後川流域の温泉を紹介します。
筑後川流域では「博多の奥座敷」と呼ばれる原鶴温泉が有名ですが、最近ではうきは市や朝倉市、久留米市、大川市などにも数々の良泉が存在しています。大分県の天ケ瀬温泉や日田温泉も筑後川流域ですが、今回は福岡県の温泉に絞って紹介します。

 筑後川流域温泉の熱源は何に由来するのでしょうか。脊振山系も耳納山系も古生代から中生代の古い地層で、その間の筑紫平野は洪積世砂礫層と沖積層ですから、熱源らしきものは存在しないのです。専門家にお尋ねしてもそのメカニズムはいまだ解明されていないとのことです。
 ただ、二日市温泉の研究で、地下の花崗岩に含まれるウランがラジウムやラドンに変化するときの熱が関係しているとの説があるようですが、これも筑後川流域には当てはまりません。となると「非火山性温泉」ということになり、フィリピン海プレートが大陸プレートの下に沈み込む時に摩擦熱を発し、プレート表面の岩石・土砂・貝やサンゴなどの堆積物などを溶かしたマグマと考えられそうです。



 最初に紹介するのは朝倉市の原鶴温泉の「延命館」です。浴室は筑後川に面しており、小さめの露天風呂からは川面が眺められます。開放感のある浴室というのはなかなか難しいもので、外からも丸見えになるので、首から下までは目隠しが必要になり、湯中から眺めは望めません。弱アルカリ性硫黄単純泉の湯は40℃ほどのぬるめで、明瞭なツルツル感があります。鉄分も含まれているようで、浴槽は赤く染まっていました。二酸化炭素の泡付きがあり、小さめの露天風呂ではさらにそれが激しくなります。分析書では遊離二酸化炭素は3mg、鉄分はなしとなっていましたが、いささか納得がいきませんでした。

延命館 朝倉市杷木志波15-2 map
【温泉分析書データ】単純温泉、45.6℃、PH8.0、成分総計590mg、220L/min、無色・澄明・硫黄臭・無味 H17.4.1




グランスパアベニュー甘木

 次は朝倉市甘木のあさくら温泉「グランスパアベニュー甘木」です。ビジネスホテルの浴場ですが、ビジホの湯と侮ることなかれ、とびっきりの名湯です。男湯は内湯でサウナ付き、女性用は露天風呂と、よく考えられた構成です。ほのかに硫黄香のあるアルカリ性硫黄単純泉の湯は、源泉温度が30.4℃を加熱したもので、驚愕するほどのツルツルを超えてヌルヌル感があります。その秘密はPH10.0という高アルカリ性に、硫黄と重曹が追い打ちをかけます。3つの浴槽があり、一つはサウナ用の水風呂ですが、加温なしの源泉浴槽にすれば、もっと良くなるのになぁと思いました。

グランスパアベニュー甘木 朝倉市甘木1677―2 map
【温泉分析書データ】アルカリ性硫黄単純泉、30.4℃、PH10.0、成分総量201mg、882L/min、微白色・微濁・僅かな苦味・弱い硫化水素臭 H19.6.29




笹の湯

3湯目は久留米市田主丸の田主丸温泉「笹の湯」です。植木とブドウで有名な田主丸町の田園地帯の中に障害者支援施設「田主丸一麦寮」があり、同じ敷地内に笹の湯があります。玄関をくぐると、広いロビーにレストランやパン工房が併設されていました。浴室には内湯と露店風呂があり、土類:系重曹泉が掛け流されていました。その湯の色にビックリ、かすかな笹濁りの湯が美しい青色を呈しています。黒川温泉の旅館山河や黒川荘で見たのと同じで、鉄分が含まれているのもそっくりです。内湯の湯口は女河童像で、その足元から湯が注がれていました。分析書の硫化水素臭は感じられませんでしたが、この辺りで初めて出会ったナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の泉質に興奮を抑えきれませんでした。

笹の湯 福岡県久留米市田主丸町竹野631番地1 map
【温泉分析書データ】ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉、52.9℃、PH8.3、成分総量1770mg、200L/min、無色・澄明・無味・弱硫化水素臭 H24.1.24




あおき温泉

4湯目は久留米市城島町の久留米温泉「あおき温泉」です。田んぼの真ん中にポツンと立っている感がありますが、人気の施設でいつも客足が絶えません。内湯と露天、それにサウナを備えていますが、内湯の一番奥の小さな浴槽が最も含硫黄-ナトリウム-塩化物泉の源泉の特徴が感じられます。しかも65℃の源泉を熱交換器により冷ましており、そのおかげでこの極上湯に浸かれるという訳です。脱衣所でさえ感じられる甘い硫黄香があり、かなりのツルツル感と塩味もあり、分析書からは想像しがたい珍しい泉質です。ここの硫黄成分はチオ硫酸イオンで、観賞魚のカルキ抜きに使われる「ハイポ」にあたり、これも珍しいもののようです。この湯に塩素消毒された水道水を足すとどうなるの、などと考えていたら頭がこんがらがってしまいました。

あおき温泉 久留米市城島町上青木366-1 map
【温泉分析書データ】含硫黄-ナトリウム-塩化物泉、65.0℃、PH8.4、成分総量1570mg、200L/min



大川昇開橋温泉

最後は家具の町大川市の大川温泉「大川昇開橋温泉」です。国の重要文化財で、全長507mにもおよぶ東洋一の可動式鉄橋の昇開橋の袂にあるスーパー銭湯がこちらです。湯はなかなかのもの、泉温70.9℃、湧出量毎分260L、弱いツルツル感のある成分総量5g超のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉です。少しぬるめの大浴槽、熱めの小浴槽、露天風呂、サウナ、ジャグジー、炭酸風呂など種類も豊富です。残念ながらコロナ禍で客足が減り、昨年4月に閉館してしまいました。

昇開橋温泉 大川市大字向島五ノ割2526-1 map
【温泉分析書データ】ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、70.9℃、PH6.98、成分総量5200mg、260L/min、無色・澄明・微弱塩味・無臭 H28.7.19 メタケイ酸69.7 Co₂93.9





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