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2021.06.26
第41回全国湯治宿レコメンド3選「鳴子・箱根・鉄輪」湯治ぐらし代表・スクランブルベップ代表
温泉マイスター 菅野 静 「湯治」・・・別府温泉地球博物館や温泉マイスターに所属されている皆さんはこの言葉をご存知だと思いますが、湯治宿の数も全盛期と高度経済成長期における日本の温泉地類型に比較して、現在は3%程度だという論文を読んだことがあります。(山村順次氏(1998):『新版日本の温泉地』)また、日本全国を見渡してもこの文字を正しく読める方は、先般立命館アジア太平洋大学で講義をさせていただいたときも、実に受講生の3%程度しか「湯治」をご存知なく、「とうじ」とも読めないことを知りました。そのくらい、湯治はもはや馴染みやニーズがなくなってきていることが現実です。
1.湯治の魅力を広く伝える使命を感じた「宮城県東鳴子温泉 旅館大沼」 1.湯治の魅力を広く伝える使命を感じた「宮城県東鳴子温泉 旅館大沼」
都会でバリバリ仕事して、ただ温泉に浸かり、読書をし、ふわふわと思考を巡らせるような温泉旅を私は繰り返していました。その頃、湯治という言葉に出会い、まさに私がやっていることは湯治だ!と思い、パソコンで湯治・宿と打ち込み、調べて出てきて心を鷲掴みにしたのは、「旅館大沼」さんでした。
ここのキッチンも素敵で便利。採れたての野菜や宮城仙台名物の牛タン等を焼きながら、またスーパーで買ってきたお刺身を中心におかずを作ったり等、お隣のお部屋の常連さんとここで毎日、朝昼晩と自炊をしたりするのが本当に楽しかったです。そうして裸のコミュニケーションで、心も体もほどけていくのを実感しました。この経験を、湯治の世界を、もっとどうにかして伝えなくては! 形にしなくてはと思い至ったのもここであり、また、その背中を押してくれたのも、旅館大沼の五代目湯守の大沼伸治さんだったので、私の大切な場所でもあります。 2. 湯治は現代社会にマッチしていると気付かされた「神奈川県箱根温泉 天山湯治郷」
湯治は、本当にニーズがないのか?本当に忘れ去られていいのか?・・・東北を中心に湯治宿巡りをしていた頃、鄙びていく湯治街を眺め、若者も利用しなくなってきている湯治宿を眺めながら、それでもどうして私がここまで湯治に惹かれるのか、わからなくなってきていました。が、ここ天山湯治郷に辿り着いたとたん、その理由も、そしてニーズがなくて忘れ去られることへの憂いは、一気に吹き飛んだ場所です。
ニーズがないなんてことはきっとなく、忘れ去られようとしているのはちゃんとPRしたりこれっていいよ!と声をあげて言っていなかったり、そうしたことがフォーカスされていないわけだから、私はちゃんと硫黄。じゃなくて言おう! そう自分の中と外側を照らし合わせていくプロセスをここで経験しました。
3. これがまさに究極の湯治ぐらしだ!と感じている「大分県鉄輪温泉 双葉荘」
移住してきてからCOVID-19の時代に突入し、気軽に旅がしづらくなりましたが、いまや地元・鉄輪にある双葉荘さんに、マイクロツーリズムとして先日お邪魔してまいりました。
この地獄釜のみならず、薬師如来さまが鎮座する温泉や飲泉、蒸気を活用したオンドルや暖房など、体の養生のための360度の仕掛けがここには揃っていて、常連さんに地獄釜の使い方を教わったり、他愛のない話が弾んだり、ここには私の考える湯治場の理想形がありました。 私たちもここで自炊をし、温泉にたっぷり浸かり、新鮮な食材をただ準備して放り込むだけ。自炊室が隣接したお部屋をご用意くださり、お腹すいたな〜と思えば食事の準備をして、のんびりしようかな〜と本を読んだり、そろそろお風呂しようかな〜とチャポチャポしたりして過ごしました。今、心身は何を欲しているか耳を澄ませて、それに応えるような過ごし方、それが真の湯治なくらしだなと思うのでした。酸性!じゃなくて、こうした生き方に賛成です。 温泉を守り受け継ぎ、私たちに抜群の温泉のクオリティで提供してくださっている湯治宿のみなさんには敬服しております。今の時代にマッチする心身のための湯治をする人々を増やすことで、その文化が絶えることなく、また現代の新たなライフスタイルとして提唱していきたいと思っております。 文・写真:菅野静 |