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2018年12月25日(火)、大分県立日田高等学校と東海大学付属高輪台高等学校1年生40名の皆さんに、研修の一環として温泉マイスター5名が鉄輪まち歩きガイドを行いました。
日田高等学校、高輪台高等学校の両校は、文部科学省の科学技術、理科・数学教育を重点的に行う学校としてスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されています。
「湯けむり展望台」から研修がスタートしました。ここでは、温泉マイスターの山村さんが、NHKが募集した「21世紀に残したい日本の風景」で富士山に次いで全国第2位に選定された別府の湯けむり、別府温泉の熱源域と考えられている伽藍岳や鶴見岳、別府市の春の風物詩となっている野焼きが行われる扇山などについて説明しました。
バスで「かまど地獄」へ移動し、ここからは5グループに分かれ地獄の見学をしました。「かまど地獄」は、1~6丁目までの地獄の見所があり、1カ所で様々な地獄を楽しめる地獄です。温泉が青く見える原因が、含まれる成分のシリカにあることに興味を示していました。
「かまど地獄」の見学を終え、いよいよ街歩きが始まりました。先ずは、鉄輪温泉のメインストリート「みゆき坂」、「いでゆ坂」を下っていきます。途中、別府市HOPU賞を受賞した共同湯「上人湯」では、木造の建物の腐食を防ぐ湯気抜き櫓(やぐら)のある構造に特徴があることを学びました。
「鉄輪むし工房」の飲泉場で鉄輪の塩化物泉を味覚で確認し、ポケットパーク内の足蒸しを体験しました。足蒸しは熱いと言いながら、少しすると気持ち良いと言って予定の時間を過ぎてしまいました。
足蒸しを体験し、次ぎに向かったのが「温泉山 永福寺」です。ここは鉄輪温泉を開基した一遍上人を祀る大分県で唯一の時宗の寺です。生徒の皆さんは、境内にある市有上渋の湯泉源に関心を示しました。
永福寺の参道脇にある「渋の湯」では、裏手にある温泉遺産の旧渋の湯の滝湯跡を見て鉄輪温泉の歴史を感じてもらいました。グループの何人かは、渋の湯入口に掲示されている渋の湯の沿革をカメラに納めていました。
渋の湯から「鉄輪むし湯広場」に移動し、湯かけ上人像で湯かけ体験を行い、横の旧蒸し湯で使われていた石を用いたモニュメントでむし湯の歴史や往時の賑わいについて学びました。また、新しくなった「鉄輪むし湯」では、むし湯の独特な入浴方法やむし湯に使われている石菖(せきしょう)の香とその成分であるテルペンの鎮痛効果について話を聞きました。
「むし湯」の次は、熱の湯通り沿いにある明治32年に建てられた別府に唯一残る築100年超の元旅館「冨士屋旅館」を見学する予定でしたが、残念ながら休館日のため建物を横目に、此処にしか残っていない別府石の石畳を下っていきました。
別府石の石畳を下ると誰でも無料で入浴できる「熱の湯」です。生徒の皆さんに熱の湯はどんな湯か尋ねると、予想通り熱い湯との返答でした。実は、熱を取る湯だったので熱の湯の名が付いたと話すと意外な顔をしていました。熱の湯脇の源泉跡を見学し、裏手に移動しました。いよいよ生徒の皆さんが一番見たかった鉄輪断層崖です。昨年、NHKのブラタモリで紹介された場所にテンションも上がっていました。
次の見学地の移動途中に、旧熱の湯源泉の湯が使われていた温泉遺産「洗濯場跡」で、此処で使われていた湯の泉質について考察してもらいました。
鉄輪温泉の泉質は塩化物泉(ナトリウム-塩化物泉)ですが、塩分が含まれた湯が洗濯に適しているとは考えにくいので、旧熱の湯源泉は成分濃度の低い湯と考えられるとの結論が出ました。
洗濯場跡から鉄輪銀座通りを抜け谷の湯通りを進むと濛々と湯けむりを上げる源泉があります。ここは日本唯一のミシュラン三つ星温泉「ひょうたん温泉」の源泉で、温水が竹の枝を伝って落ちると水滴状に分散され、それが空気と触れ大量の熱(気化熱)が奪われることで100℃の源泉を、数秒で50℃以下の、入浴に適した温度にまで冷ますことができる「竹製温泉冷却装置」があります。ひょうたん温泉の所有で、ここからひょうたん温泉に温泉水が引かれています。この説明を、今回の研修講師であり設計者でもある東海大学の斉藤雅樹 教授よりお聞きすることができました。
谷の湯通りに沿って流れる「湯の川」で高温下に生息する特殊な藍藻類を確認し、共同湯の「谷の湯」を通って鉄輪まち歩きガイドの終点で昼食場所の「地獄観光ラボ縁間」に着きました。生徒の皆さんは、自ら地獄蒸しをした食材を塩味が丁度良く美味しいとあっという間に平らげました。
午後は、「大分県農林水産研究指導センター」の農業研究部花きグループへ移動し、温泉熱を利用した花き栽培やスマート農業ハウスの見学、向かいの「もと湯の宿 黒田や」でカスケード(多段)方式の温泉熱利用施設の見学を行い、農林水産研究指導センターへ戻って京都大学の由佐悠紀 名誉教授と東海大学の斉藤雅樹 教授の講義を受け、充実した研修を終えました。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)について
国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業 http://www.jst.go.jp/cpse/ssh/