博物館についてスケジュールカテゴリー別府温泉事典リンク集
HOME地球のはなし>雲南紀行 6 汚れた滇池(テンチー)

地球のはなし  別府温泉地球博物館 代表・館長 由佐悠紀

No.28
「雲南紀行 6 汚れた滇池(テンチー)」

 漢の武帝がその版図に組み入れる以前、雲南は滇(テン)という独立国であった。この国名は、昆明市の南にある雲南最大の湖・滇池に由来するという。残念ながら、それより先のことは知らない。湖の名は、ともかく古い。

 旅の終わりに、その西岸をほとんど垂直に境する西山に登った。比高は300メートル位かと思うが、高さへの感覚はにぶいので、あてにはならない。今は立派なリフトが建設されていて、簡単に登ることができる。

 山上の駅から少し歩くと、雲南を訪れた若き日の司馬遷も見たであろう(と思いたい)滇池が一望される。眼下に広がる広大な湖面には、1隻、2隻と、帆掛け舟が止まっているかのように漂っている。

 「一幅の絵である」と言いたいところだけれども、アオコで覆い尽くされた厚ぼったい感じの緑色の水の前では、とてもそんな感想をもらすわけにはいかなかった。

 「滇池は臭池に変わってしまうのか?」というのは、上海で読んだ新聞のコラムの見出しである。昆明市の発展に伴う大量の生活排水や工業排水の流入、周辺地域での化学肥料使用量の増大などのため、湖水の汚染と富栄養化が急速に進んでいるのである。国も地方政府も浄化の努力を続けているとはいうものの、現状は厳しいらしい。

 この夏は、おそらく、雲南も暑いことであろう。滇池の水はますます悪化しているのではなかろうか、と気になる。

  - 「大分合同新聞夕刊」  1994年8月 -



ページTOP

 

カテゴリー


別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介します。