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「みんなで探そう二酸化炭素」参加レポートシニア・マイスター 甲斐 心也
別府市とNPO法人別府温泉地球博物館の主催で、9月30日(土)に「みんなで探そう二酸化炭素泉」と題したイベントが開催されましたので、その様子をレポートします。 当日は秋晴れの好天に恵まれ、別大国道からは右手に広がる別府湾、前方の別府の街並みとその先の鶴見山系、爽やかな青空と白い雲が広がっていました。 午前10時より、京都大学名誉教授の由佐悠紀先生による「別府の二酸化炭素泉について」と題する講演がありました。二酸化炭素泉ができるのはプレートテクトニクス理論で説明できるそうです。要約すると、「2億年もの時間をかけて太平洋を移動してきた海洋プレートは、アジア大陸のプレートにぶっつかり、その下に沈み込んでいる。長湯温泉の炭酸ガスはマグマ起源で、その炭素の約70%は海で生成された炭酸塩起源である事がわかっている。プレートに乗っていた堆積物中のサンゴや貝殻などのCO2が、マグマに取り込まれた炭酸ガスとなったもので、別府でも同様の事が考えられる。」との事でした。 また、1970年発刊の「大分県鉱泉誌」によれば、市街地の流川下流域の旧南町・北町・太呂辺 (現在の楠町・中央町・田の湯町?) に最高1,654mgの遊離二酸化炭素を持つ源泉が存在していたことが記録されているとの説明がありました。 続いて別府市温泉課の中村さんより、「二酸化炭素泉存在の仮設」に関する説明がありました。市が2016年に行った調査によれば、①ラクテンチ内の源泉から800mg/kgを超えるサンプルが採取できた、②大分県鉱泉誌1970では、市街地に二酸化炭素泉が収集していた記録が残っている、③ラクテンチも別府市街地の源泉も、赤茶けた鉄分を含む温泉である傾向が伺える、との指摘がありました。 ここから3グループに分かれ、調査地点の概況等を確認しました。今回の調査では、大分県薬剤師会検査センター様の協力を得て、現地で遊離二酸化炭素の測定が出来ることになっています。出発に先立ち、薬剤師会の検査技師さんから測定方法についてのレクチャーを受けました。 急な坂を乙原川の河原まで下り、流れの速い渓流を渡った先に、湯小屋の残骸らしきものが見えてきました。近づいてみると、枯れ葉が堆積しているものの、コンクリート造りの浴槽に間違いありません。やや白濁、鉄分が付着している様子が見られ、期待に胸が膨らみます。手を浸けてみると、アチャ、かなり熱めです。浴槽の一番奥の湯中に小さなほら穴が開いていて、そこから湯が湧き出していました。測定の結果、湯温46.4℃、PH6.76、遊離二酸化炭素176mg/kgでした。金気味臭はほとんどなく、かすかに硫黄臭が感じられました。残念ながら、ここは二酸化炭素泉とは言えないようです。 二十年以上も人の手が入れられていないにもかかわらず、コンコンと湧き続けていた源泉に愛おしさを感じました。また、ちょっと整備をすれば、入浴可能ですが、現状ではアクセスに危険があり、復活させるのはかなり困難の様です。 次に向かったのは乙原集落の入り口付近の民家で、乙原山の急な斜面に沿って家が建てられています。近隣の住民が共同利用している浴室は、1m四方の小さな浴槽が一つだけで、100mほど奥の源泉から引き湯をしているとの事でした。この浴槽も鉄分で赤く染まっていて、がぜん期待が高まりますが、手の浸けてみるとアチチと声が出るほどに高温です。湯はほぼ無色・透明で、弱い金気臭はありますが炭酸味は感じられません。 持ち主の方の案内で源泉のある場所に向かいました。狭い通路に沿って引き湯のパイプが続いている先に源泉地があり、通路から10mほど高い場所に湯貯めの桝があり、中を見ることはできませんでしたが、崖の奥にパイプが突っ込んであり、そこから湯が湧き出しているとの事でした。通路脇にももう一つの小さな桝があり、ここからは溢れるほどに湯が溜まっていました。測定の結果、湯温57.2℃、PH7.08、遊離二酸化炭素137.6mg/kgでした。 この通路の下に、草木の生えていない地獄地帯のような場所があり、小さな噴気孔からガスが噴き出す様子が観察できました。この一帯は地表近くにかなりの熱源があるようで、温泉の源泉も一つではなく、複数の小さな自噴泉があるようです。 |