我が国の温泉療法は、1876年、E・ベルツによりドイツ温泉気候医学がもたらされ近代医学として確立されました。(注1) 近年、全国的な温泉ブームの中で温泉偽装(注2) が問題となり、温泉の公正な品質表示が問われるようになりました。本来、我が国の温泉は、環境省「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」により、医療効果が期待できる温泉には、含まれる化学成分により「療養泉」としてそれぞれに泉質名が与えられ、全ての療養泉に係る禁忌症、適応症と、泉質ごとの禁忌症、適応症とが定められ、温泉法に基づき利用者に表示することとされています(注3)。
温泉の人体に対する効能には、このような含有成分による効果のほかに、温熱効果、浮力による効果、静水圧による効果などがあり、最近では温熱効果の中でヒートショックプロテイン(HSP)が注目されています。
療養泉の効能は、含有成分の質と量に基づいていますが、科学的根拠に乏しいことが指摘されており、今後、新たな研究成果に基づき確証が得られて行くと思われます。
注1:阿岸祐幸、温泉と健康、岩波書店、2009
注2:公正取引委員会、温泉表示に関する実態調査について、平成15年7月31日
注3:環境省自然環境局長通知、温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準、平成26年7月1日