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松田 繁 著『別府、浜脇町鉱泉に関する取調書類』

●松田 繁 著『別府、浜脇町鉱泉に関する取調書類』を収録するに当って

 別府温泉における最初の温泉井掘削のことは、ウェブサイト「別府温泉地球博物館」の「別府温泉事典」に「最初の掘削」として紹介されています。そして、その関連資料として、鉱山監督官・松田繁の調査報告書が挙げられています。しかし、明治38年3月、大分県知事・大久保利武に提出された報告書は、公開されないまま、歳月が過ぎました。
 ところが、その内容は、「別府温泉の自然科学的研究」であると同時に、「温泉資源の利用・保全」という観点からも先駆的かつ示唆的なもので、このまま埋もれてしまうのは、残念と言うより以上に、大きな損失と思います。故に、このアーカイブに収録することにしました。

 この報告書は、毛筆で縦書きに書かれ、「序文」、「第1章 概説」、「第2章 別府浜脇温泉」、および「別府浜脇両町内温泉調査表」から成っていますが、やや大部なので、数回に分け、横書きの電子ファイルにして、アップロードします。なお、原文の仮名文字は「カタカナ」ですが、「ひらがな」に変えています。


第1回目は、「序文」と「第1章 概説」です。

「序文」は、本調査の発注者である大分県知事に宛てた、明治38年3月28日付けの文章です。この調査が実施されるに至った動機や調査の概要が述べられています


「第1章 概説」では、別府地域の地質、火山、噴気(地獄)、温泉の概要が述べられています。

 火山活動の歴史などに現在の解釈と異なる点もありますが(注)、火山岩や堆積層の種類と分布は、現在のものと大きな違いはありません。明治維新から40年も経っていないにもかかわらず、近代的な地質調査が行われ、論文が草されたことは、着色された美しい地質図も含めて、高く評価されるべきものと思います。
 わが国の地質学に関する代表的な学術誌として、日本地質学会発行の「地質学雑誌」があります。創刊は明治26(1893)年ですが、その第12巻(通号140号:明治38(1905)年5月発行)に、本報告の第一章が独立した論文として「大分縣別府四近の火山並に温泉に就きて」の表題で掲載されています。なお、用いられた仮名は「ひらがな」です。
 ところが、この論文は、一般にはあまり知られなかったようで、地質調査所から昭和63(1988)年に発行された「別府地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)」には収録されていません。大分県知事に提出された本報告を、ここに収録することの所以の一つでもあります。

 (注)例えば、別府地域の古い火山として、速見郡(現在の地域で言えば、別府市、由布市湯布院町、日出町、宇佐市と杵築市の各一部)の大半を覆うほどの巨大な火山を想定し、「速見火山」と名付けています。

 本報告を収録するに当り、コピーを提供された「NPO法人 別府八湯トラスト」に深謝申し上げます。

(由佐悠紀)