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4.大分県における近年の源泉分布と泉質分布 | |
大分県の温泉(7)大分県温泉調査研究会会長
別府温泉地球博物館理事長 由 佐 悠 紀 5-3.水(流体)の通路-土地は壊れているか-大分県の中部地域の地質学的な特徴のひとつは、新しい火山が集中しているということである。その代表的な火山が、別府温泉の背後に立ち並ぶ「鶴見連山」、孤立峰のように見えて豊後富士とも呼ばれる「由布岳」、そして数多くの山々が重なる「九重山」である。いずれも活火山に認定されており(注1)、地下には、現在もなお、「温泉の熱源」が存在しているものと考えられる。 注1:大分県の活火山 大分県の火山は、下記の3つが活火山に認定されている。それぞれの名前は、活火山リストに挙げられているものである。 他方、気候学的に日本列島はアジアモンスーン地域に属し、降水量に恵まれている。大分県もそうであって、大分地方気象台(大分市)における年平均降水量は1700mm程度で、全世界の年平均降水量(約1000mm)の1.7倍に当る。山地部ではさらに大きく、2000mmを超える。 〔優勢な温泉を伴わない活火山:富士山と羊蹄山〕 日本の象徴ともされる富士山は、宝永4年(1707)に噴火した活火山で、現今の活動状態からランクBに分類されている。現在、明瞭な地熱活動は認められていないが、明治時代には山頂に活発な地熱活動があった(匿名執筆者,1891)。また、近年行われた地震波や電磁波による地下構造探査から、微弱ではあるが、地下深部から熱エネルギーが供給されていると推定されている。このように、富士山の地下には熱源が存在すると考えてよい。
〔優勢な温泉を伴う火山:鶴見岳・伽藍岳、由布岳、九重山〕富士山や羊蹄山と対照的なのが、鶴見岳・伽藍岳を要する鶴見連山であり、その東麓には日本で最大規模の温泉・別府温泉が展開している。鶴見連山の山容は、写真に見られるように、かなり複雑である。実際、この山群を含む一帯の土地は、多くの断層で破砕され、水(流体)の通路に富んでいる。
表13. 別府流域の水収支(単位:1000 m3/日)
表13には、流域面積約66 km2の別府温泉における日平均の水収支(降水量、およびその消費のされ方)を示すが、降水量(349,000m3)の約40%に当る量(138,000m3)が地下水として流出しており、この点が富士山や羊蹄山と大きく異なる。この内、深層地下水である「温泉水」としての流出量(57,000m3)が、降水量の約16%を占めていることが特徴的で、別府流域の土地は降水が深くまで浸透できる構造になっていることが窺われる。 図5は、別府-九重-阿蘇の火山域を含む中部九州の衛星画像である。画面中央の阿蘇外輪に広がる地域は、9万年前に噴出した阿蘇-4火砕流堆積物で覆われているため、地面が比較的平坦であるが、別府から九重にかけての地面にはしわや線状の構造が見られ、土地の破壊が進んでいるように見える。実際に九州島は、この範囲を境にして南北に年間1cm前後の速度で拡大しているため、土地が陥没するなど、無数の断裂が発達しており、降水が地下深部まで浸透できる構造になっている。
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