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別府温泉辞典

あ か さ た な は ま や ら わ

温泉

おんせん



温泉

おんせん

 「温泉」は自然現象ですから、その本来の定義は自然科学的なもので、たとえば、次のように表されます。
 「普通の地下水の温度より高温の水が地中から地表に出て来る現象。」
 他方、温泉は日常生活と関わりあい、ひとつの産業分野を形成しているように、高い社会性があります。そのため、法律等による管理の対象となり、人為的な観点からの定義もなされています。一般に知られているのは、こちらの方ではないかと思われます。

 わが国の温泉は、昭和23(1948)年7月10日に施行された温泉法の第二条によって、次のように定義されています。

第二条  この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
2  この法律で「温泉源」とは、未だ採取されない温泉をいう。

別表
1.温度(温泉源から採取されるときの温度とする。) 摂氏25度以上
2.物質(下記に掲げるもののうち、いずれか一) 含有量(1キログラム中)
  溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000ミリグラム以上
  遊離炭酸(CO2)              250ミリグラム以上 
                                         (以下 略)

温泉法第二条の要点を書き直すと、次のようになります。

「温泉」とは、地中から湧き出す水・水蒸気・その他のガス(メタンなどの炭化水素を除く)のうち、下記のいずれかの要件を備えているものをいう。
 湧き出す箇所で;
 ①温度が25℃以上であるもの。
 ②温度が25℃未満でも、定められた成分が一定量以上含まれているもの。

 温泉法の「温泉」は、「水・水蒸気などの流体」であることに注意してください。しかし実際には、「温泉が湧き出す現象」にも、「温泉の湧き出し口(源泉)」にも、「温泉が存在する場所(温泉地)」の意味にも用いられています。「温泉」はあいまいな言葉ですが、その分、使い勝手の良い言葉とも言えるでしょう。
 要件による温泉は、一般に「鉱泉」と呼ばれているものです。医療効果があるとされ、古くから人々に利用されて来ました。低温なので温泉の概念にはそぐわないような気がしますが、通常の水とは異なる価値のあることから、温泉法に取り入れられました。
 ところで、火山から立ち昇っている噴煙は、硫化水素や炭酸ガスなどを含んだ水蒸気で、しかも、高温です。温泉法の要件を十分に備えていますので、温泉と見なしても差し支えないことになります。

 温泉法の用語「ゆう出する」、および、同義語の「湧き出す」のイメージは、「自力で出てくる」というのが一般的と思われます。しかし、現実には、何らかの動力を用いて汲み上げるものも、「温泉」と見なされています。自力で出てくる温泉は「自噴泉」、動力で汲み上げる温泉は「動力泉」と言います。「自噴する量」と「動力による量」は、両者とも「湧出量」と表現されることが多いのですが、誤解が生じる恐れがあり、特に資源保護の観点からは、明確に区別されるべきです。
 環境省の統計によると、平成23(2011)年3月末現在、日本全国では27,671の源泉が登録されていますが、そのうち、動力泉は19,886、70%強を占めています。今や日本の温泉は、「湧き出す」と表現するのは、必ずしも適切ではないような状態になっています。
 「別府温泉地球博物館」では、原則として、それぞれを「自噴量」および「揚湯量、または揚水量」と表し、両者をまとめて表すときは、「採取量」を用いることにします。

[温泉の3要素]
 私たちが温泉を利用するとき、重視している3つの要素があります。すなわち、「温泉の温度(泉温)」・「温泉に含まれている成分(溶存成分)」・「湯の量(採取量)」で、これらをまとめて「温泉の3要素」と呼んでいます。

 この項に記された事柄から、温泉には、いろいろな種類があることが分かります。これについては、「温泉の種類」の項に記されています。また、温泉の定義にまつわる話は、コラム「温泉の温度(泉温)・・・なぜ25℃以上なのか?」に書かれています。

執筆者由佐悠紀)

温泉の種類

おんせんのしゅるい

 一口に温泉と言っても、さまざまな種類があります。よく知られている種類は、生理的・療養的な観点から分類した「温泉の泉質」に関わるものです。以下には、これと別の観点から分類した種類を示します。

[採取形態から分類した種類]

 「自然湧出泉」とは、文字通り、温泉水が自然に湧き出てくる泉です。昔の温泉は、全てが自然湧出泉だったのは、言うまでもありません。「掘削泉」は掘削した井戸を通して温泉水を取り出すもので、自力で湧き出すものを「自噴泉」、何らかの動力を用いて取り出すものを「動力泉」と呼んでいます。
 環境省や各都道府県から公表されている「温泉利用状況」の「自噴」は、自然湧出泉と掘削で得られた自噴泉を合わせたものです。

[水の状態から分類した種類]
 取り出される温泉水が、液体であるか気体であるかによって、次のような種類に分けられます。

 「噴気」とは、高温の水蒸気が自力で噴出するもので、沸騰点(1気圧で100℃)を超えて、過熱蒸気になっていることもあります。また、一般に、二酸化炭素や硫化水素が含まれています。噴気には、掘削された井戸からのものと、自然のものとがあります。
自然の噴気には、岩の割れ目などから蒸気が勢いよく噴出しているものもあれば(噴気孔)、地面のどこからともなく蒸気が立ち昇っているものもあります(噴気地)。
熱水が沸騰しながら噴出しているものを沸騰泉と言います。液体の水と気体(水蒸気)が共存しているので、噴出口の温度は、その場所の沸騰点になっています。
噴気と沸騰泉の多くは、現象が活発で、爆発的に湯や泥を吹き上げるものもあります。そうした激しさの故に、「地獄」と呼ばれてきました。掘削泉の噴気や沸騰泉も、地獄と呼ばれることがあります。
別府温泉の象徴とも言える「湯けむり」のうち、高く立ち昇っているものは、そのほとんどが、掘削による噴気もしくは沸騰泉の蒸気から生じたものです。
温度が沸騰点より低く、液体の水として採取されるものが普通の「温泉」ですが、意味を明確にするために、「一般温泉」と呼ばれることもあります。

[熱源から分類した種類]
 これについては、「火山性温泉」と「非火山性温泉」に書かれています。付図は、それらを総括したものです。


  (注)火山性温泉の3つの型の温泉は、それぞれ、次のようにも呼ばれます。
火山ガス吹き込み型温泉
熱水希釈型温泉
蒸気加熱型温泉


火山ガス加熱型温泉
熱水性温泉
蒸気性温泉

別府温泉は火山性温泉を代表し、大分市の温泉は非火山性温泉を代表します。別府湾の沿岸では、わずか10数kmしか離れていない隣り合う地域に、2つのタイプの典型的な温泉が展開しています。


[生理的・療養的観点から分類した種類]
これについては、「温泉の泉質」と「療養泉:泉質名の付け方」に書かれています。

執筆者由佐悠紀)