地下水
ちかすい
地下に存在する水を総称して、地中水(ちちゅうすい)と言います。井戸を掘るとき、浅い部分では土が湿り気を帯びていても、しばらくは水面が現われません。さらに掘り進むと、井戸内に水面が出現します。すなわち、浅い部分の地中水は水面を形成できない状態にあるのに対して、深い部分の地中水は水面を形成できるような状態にあります。
水面が形成されない浅い部分は、土粒子の間の空隙が水で満たされていないため、不飽和帯(ふほうわたい)と呼ばれ、そこに存在する水は土壌水(どじょうすい)とか土湿(どしつ)と呼ばれます。空隙には空気や水蒸気が存在し、それらの気体は大気と連絡しているので、通気帯(つうきたい)と言うこともあります。多くの植物は、この不飽和帯の水を根から吸い上げて生命を維持しています。
水面を形成するような状態にある場合は、空隙が水で満たされているためと考えられ、そのような部分を飽和帯(ほうわたい)、そこに存在する水を地下水と呼んでいます。
飽和帯において、空隙間の連絡が悪いと水は流れにくく、連絡がよければ流れやすくなります。水の流れやすい地層を透水層(とうすいそう)あるいは帯水層(たいすいそう)と言います。一般には地下水層(ちかすいそう)とも言います。優れた帯水層の多くは、主に砂礫からできています。
水の通りにくい地層を難透水層 (なんとうすいそう) と言います。また、水をまったく通さない地層を不透水層(ふとうすいそう)と言いますが、本来そのようなものはありません。通常は、難透水層を不透水層と言っています。細かい土粒子(粘土やシルト)が集まった粘土層やシルト層が、代表的な難透水層です。
地下水は、そのあり方によって2種類に分類されます。
不飽和帯の下端に接続し、不飽和帯の気相を通して大気と接している地下水を、大気圧以外の特別の圧力を受けていないという意味で、不圧地下水(ふあつちかすい)と呼び、その水位(井戸の水位)を不圧地下水位、地層を不圧帯水層(不圧地下水層)と呼びます。また、この水位を連ねた面を地下水面(ちかすいめん)または自由地下水面と言います。
不圧帯水層の下方には難透水層が存在し、上方の水の受け皿の役割を果たしています。この難透水層を掘り抜くと、その下方にも地下水が存在します。そのような水は、上方の地層によって閉じ込められた状態にあり、その荷重を受けているので被圧地下水(ひあつちかすい)、地層を被圧帯水層(被圧地下水層)と言います。
被圧地下水には圧力がかかっているため、井戸内の水面は難透水層のレベルを越えて、上方の地下水面より高くなることがあります。そのような状態は低地部でよく見られ、水がしばしば地表面より高くまで上昇し、噴き出す(自噴する)ことがあります。そうした井戸を被圧井(ひあつせい)あるいは掘抜き井戸(ほりぬきいど)、自噴するものは自噴井(じふんせい)と呼びます。また、それらの井戸水位(自噴する場合は、管をつぎ足して静止水位を作る)を結んだ面を静水面(せいすいめん)あるいは静止水面(せいしすいめん)などと言います。地下水学での特殊な述語として、静止水頭(せいしすいとう)があります。
別府の掘削泉(温泉の種類を参照)のほとんどは、掘抜き井戸です。これほど多数の掘抜き井戸が集中している場所は、めったにありません。
図 地下水のありかた |
(
由佐悠紀)