火山性温泉
かざんせいおんせん
火山の地下に存在する「マグマ溜まり」を熱源とする温泉を、「火山性温泉」と言います。溶融状態のマグマの温度は1000℃程度です。地下に浸透した雨水は、このマグマからの熱で加熱されて、温泉になります。加熱のされ方には、次の2つがあります。
1. 地層を通しての熱伝導。
2. マグマ溜まりから上昇してくる高温流体の混入。
熱伝導による加熱速度は小さく、高温流体の混入が特に重要です。
マグマからの高温流体は、一般に「火山ガス」と呼ばれます。世界には数多くの活火山があり、それらから火山ガスが噴出しています。その圧倒的に多量な成分は、水蒸気(H2O)です。次いで、比較的多量な主要成分として、次の4種類のガスがあります。
塩化水素(HCl)、二酸化硫黄(SO2)、硫化水素(H2S)、二酸化炭素(CO2)
これらのガス成分から酸が生じます。それらを含んだ酸性の温泉水は、地下を流動する途中で、周囲の岩石類から金属成分を溶かし出し(中和反応)、3種の基本的な泉質、すなわち、塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉が生じます。
火山性温泉の泉質形成モデル
(火山ガス吹き込み型を除く) |
世界各地の火山地域の地下深部に分布する本源的な温泉水(熱水)の泉質は、塩化物泉型です。これが地下水で希釈されて生じた温泉を、熱水希釈型温泉(または熱水性温泉)と呼びます。
他方、熱水から分離した蒸気には硫化水素や二酸化炭素が含まれています。そのような蒸気で加熱された温泉(蒸気加熱型温泉または蒸気性温泉と総称)の泉質は、硫酸塩泉型や炭酸水素塩泉型になります。
特に活動的な火山地域では、塩酸と硫酸を含む強酸性の温泉がみられることがあります。それらは、表流水や浅い地下水に火山ガスが直接吹き込んで生じたもので、火山ガス吹き込み型温泉(または火山ガス加熱型温泉)と呼ばれます。
別府温泉は典型的な火山性温泉で、火山ガス吹き込み型を除く、すべての型の温泉が存在します。
(
由佐悠紀)
非火山性温泉