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血の池地獄ちのいけじごく 【概要】大分県別府市大字野田にある、温泉が湧出する池。JR日豊本線亀川駅の西南西・約1.5kmにあります。池の浅瀬に堆積した沈殿物が“赤い血の色”に見えるので、この名で呼ばれるようになりました。国の名勝に指定されています。
最初の記録は、8世紀前半に編纂された『豊後国風土記』の速見郡の項に登場します。漢文で書かれていますが、その現代語訳(1)を下に掲げます。 赤湯泉(あかゆ) 郡役所の西北にある。 また、江戸時代の“絵入り百科事典”と言われる『和漢三才図会(寺島良安著)』の「巻 第56 山類」の「地獄」の項に、日本の地獄として、山頂から噴煙をあげる10カ所の火山が挙げられ(そのひとつは鶴見岳)、番外的に「赤江地獄」の名称で下のように紹介されています(2)。 (現代語訳) 【池の形・大きさ・深さ(3)】池を上から見ると、図1のように、一辺が約45mの“三角むすび”の形をしています。図中の曲線群は、1976年8月に測られた等深線で、実線は2m間隔で描かれていますが、一番浅い点線は1m深、池底近くの点線は25m深を表しています。このように、池の東半分は浅いテラス状になっていて、赤色沈殿物はここに溜まっています。これに対し、中央から西半分はロート状の深い穴になっていて、その最深部(×印;26m深)付近から高温の熱水が湧き上がっています。1976年8月の測定では、136.8℃でした。
【沈殿物の正体と生成メカニズム】 血の池地獄の沈殿物を構成している鉱物は、シリカ(ケイ酸:SiO2;結晶はクリストバライト)が最も多く、次いで、アルミニウムを含んだ粘土鉱物(カオリナイト)で、これらは白色です。赤色の原因物質は鉄の化合物で、赤鉄鉱(ヘマタイト:Fe2O3;赤色塗料の弁柄(べんがら)と同じ)と鉄明礬石(ジャロサイト:KFe3(SO4)2(OH)6)です(4),(5),(6),(7)。ただし、赤鉄鉱は地下の高温・高圧条件下で生じた(4)のに対し、鉄明礬石は温度が低下した池の表層部で生じたものと考えられています(5)。赤鉄鉱は赤色ですが、鉄明礬石は黄色を呈するので、現実の沈殿物は中間的な色をしています。
【血の池地獄の温泉水の化学組成】参考のため、血の池地獄の温泉水の主要成分などを掲げます(8)。 分析機関名:(公社)大分県薬剤師会検査センター (由佐悠紀)
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