別府白土
べっぷはくど
安山岩などの火山岩が硫酸酸性の熱水の作用を受けて、金属成分(K, Na, Ca, Mg, Fe, Al 等)が溶け出し、成分のほとんどがシリカ(SiO2)となって白色化した岩石を「珪酸白土」と言います。日本の火山地域のあちこちにありますが、代表的なものが別府のもので、かつて「別府白土」と呼ばれて採掘されていました。用途は、セメントの混合物、水ガラス(接着剤)、ゴムの硬化剤などです。
白土の鉱山は、伽藍岳(鶴見火山群を参照)をはじめとして、鍋山・湯山・明礬・北鉄輪にありました。かなり以前から採掘されていたようですが、本格的な採掘が始まったのは太平洋戦争後(1940年代の末頃)で、最盛期には月産1万トンほどもありました。しかし、高品質のものが減ったことや珪石の輸入が増えたことなどのため、採算がとれなくなり、最後まで残っていた伽藍岳の鉱山も1990年代の初め頃に閉山されました。鉱山跡の近くには、酸性泉(温泉の泉質を参照)として名高い「塚原温泉」があります。
付表は、伽藍岳の安山岩と白土の成分(重量%)を比較したものです。白土の成分は、90%以上をシリカが占めています。これほどの高純度になったのは、安山岩から金属成分が溶出されると共に、熱水が運んできた珪酸が沈殿したためと考えられています。(珪華→温泉沈殿物を参照)
|
SiO2 |
TiO2 |
Al2O3 |
Fe2O3 |
MnO |
MgO |
CaO |
その他 |
Total |
安山岩 |
60.71 |
0.78 |
16.61 |
6 |
0.14 |
2.83 |
6.09 |
5.42 |
98.58 |
白 土 |
92.1 |
1 |
2.37 |
0.16 |
- |
0.06 |
0.13 |
4.34 |
100.16 |
伽藍岳の白土鉱山跡 : 1995年4月頃 |
(
由佐悠紀)
大分県(1973):土地分類基本調査 別府,35p.
竹村恵二・由佐悠紀・馬渡秀夫(1994):別府地域の火山岩調査(2)-北部地域-,
大分県温泉調査研究会報告,45,11-14.
由佐悠紀・大沢信二・北岡豪一・竹村恵二・福田洋一(1995):伽藍岳の地熱調査,
大分県温泉調査研究会報告,46,5-13.