掘抜き井戸 (英語)artesian well
(ほりぬきいど)
【この項については、地下水の項を参照してください。】
地下の深いところにある地下水を採取するための小口径の井戸。略して「掘抜き」とも言います。また、一般的ではありませんが、「鑽井(さんせい)」とも呼ばれます。地下水に掛かっている圧力が大きいと、自噴します(注)。もともとは、そういう自噴井(じふんせい)を指していました。
記録に残っている最初の掘抜き井戸は、1126年にフランス北東部のアルトア(Artois)で掘られ、これが英語の“artesian well”の語源になったと言われています(1)。オーストラリア大陸の中東部に広がる大鑽井盆地(だいさんせいぼんち:Great Artesian Basin)は、3000本にも達する自噴井がある世界最大の鑽井盆地として有名です。
日本を代表する温泉地である別府温泉や由布院温泉で掘削された源泉(温泉井戸)は、ほとんどが掘抜き井戸で、かつては、突湯(つきゆ)とか穿湯(さくゆ)と呼ばれていました(2) (3)。両温泉地とも、多数の源泉が掘削されたため、近年、自噴泉の数が減少しています。
夏目漱石の『坊っちゃん』の冒頭部分にある子供の頃のエピソードのひとつに、田圃の井戸に悪さをしたことが書かれています。東京で生まれ育った漱石の生家は、水田地帯であった早稲田の喜久井町にありましたから、漱石は実際に、水田を灌漑するための掘抜き井戸を見ていたに違いありません。
(注)地下水学的により明確な表現は:
地下水の静水面(せいすいめん)が地表面より高いと、自噴します。
【地下水の項の付図を参照】
(
由佐悠紀)